$BD6AG?M$N%.%?!<@=:n(B


since 2003.4.16

last update 2014.11.28

ネック入れ

 
 

ネック入れについて

 ギター製作(ドイツ式ネックジョイントの場合)で最大の難関と言われているのがネック入れです。ネック入れを失敗すると、 「仕込み角が甘く弦高が高すぎて弾けない」、「ダブテイルノ食いつきが甘くネックが起きてくる」等の致命的な トラブルにつながる可能性があります。

 「ネック及びヒールのセンター」がずれてネックが縦方向もしくは横方向から見て斜めに入っている、「ネックと胴の 密着」ができておらず隙間があるなどは、余りにひどい場合(ネックが斜めに入っていて、弦が指板の上を通っていないとか) は致命的ですけど、大概は多少見た目が悪いとか、ピッチが多少甘いという程度ですので、致命的な欠陥とまではいかないよ うに思います(他人に弾いてもらったり、ましてや売るなんてとんでもないってことになりますが)。

 作業自体はヒールキャップの接着も含めて、慣れれば2、3日、最初のうちは1週間も見ておけばいいと思います。と 言うより、1週間もダブテイルを削っていたら、ヒールが小さくなってしまいネックが使い物にならなくなります。実際 には運もかなりあったりします(偶然がっちり入ったり)。




ヒールブロックの加工





 まず、ダブテイルの受けを作っていきます。バインディングを巻く前にノコギリで切れ目を入れてありますので、その切 れ目に沿って、表板側のバインディングを切断します。

 ここから溝を彫っていきますが、刃物をいれた時、木目に沿って割れると困りますので、表板の縁切りをしました。多分、 この作業は不要だと思いますが、念のため。 切り目に沿って、手ノミで溝を削り出していきます。ノコギリの切り目は奥 まで入っていませんので、ノミで側面も整形しながら彫り進めます。






 ルーター+テンプレートで一気に切ってしまう方もいます。そちらの方が精度も高く、作業効率もいいと思います。私は、 ルーターが暴走して(正確にはテンプレートの固定が甘かったのだと思います)、側板を大きくえぐってしまった様子を目の 前で見たことがあり、それ以来怖くて手ノミを原則にしています。

 手間はかかりますが、精度は丁寧に施工すれば手ノミでもしっかり出ますので、どちらでもお好きな方を選べばと思います。 ネックを入れる時にノミをまた入れますので、この段階では、狭め&粗めでもOKです。




ダブテイルの整形





 胴にダブテイルの受けが整形できれば、実際に彫れた溝を基準に、ネック側のダブテイルを罫書きます。罫書いた線より少し 大きめにノコギリで切りだします。ダブテイルもルーターで切る人もいます。受け側と同じ角度の刃を使えば、テンプレートが 正確なら同じラインの雄雌ができますので、楽なんだろうと思います(自分でしたことが無いので推測です)。メーカーなどは 間違いなく機械で切って、人の手で微調整のパターンだと思います。精度が出て、がっちり食いつけばどちらでもOKです。

 ネックが接合される胴の部分は直線でなく曲線なので、ヒール部をその型にあわせる必要があります。ヒールからダブテイル 部分をえぐる感じでノミを入れていきます。この部分の角度でネックの仕込み角がある程度決まってきます(この部分が密着 するようにダブテイルを削っていくため)。次項に記載しますが、仕込み角は実際の弦高を基準に合わせていきます。弦高は ボディの形状等(表板のRの具合やブリッジの厚みなど)で、ギターごとに違いますので、何度(あるいはマイナス何ミリ) といった固定した基準を使うよりも、実物に応じて調整する方が確実です。

 また、「胴との密着」、「仕込み角」だけでなく、ネックと胴のセンターが直線でつながっているか等もこの部分を削って 合わせ込むことになります。それらがなかなか合わずに加工が長引くと(削り過ぎると)、段々ネックが短くなります。






 14Fジョイントが13.5フレットジョイントになってもさほど影響はないのですが、ブリッジの位置がその分ずれますので、 最悪ブリッジプレートの上にブリッジが乗らなくなってきます。また、ヒールが小さくなってしまい、見た目のバランスも崩 れます。どちらの場合も、ネックを作り直すしか修正方法はありません。実は今回は思ったより早く合ってしまい、少しネッ クが長めではいってしまったらしく、14Fジョイントのはずが、14.5Fジョイントになってしまいました。その話は、また指板 を貼る時に。

 写真は側板にあわせたところで(ダブテイルを削る前)、胴に入れてみたところです。まだまだ余裕があるように感 じますが、実際に合わせ始めると、あっという間に高さは無くなってしまい、あせることが多いです。




ネック入れ





胴のダブテイルの溝とネック側のダブテイル、両方削って合わせることになりますが、私の場合は主にダブテイルを削って 合わせていくことが多いです。当然、実際に合わせてみて、それ以外の部分も削る必要が出てくることも有ります。ネック と胴の接合部や、ダブテイルの高さ等々。そのあたりは実際に経験してみないとわかりにくいと思いますが。

 削り過ぎてスカスカになった時は、シム(薄板)を噛ませます。薄板は左右両方に入れる必要はなく、片方に0.5mmの薄板 を入れただけで、十分浮いてきますので、再びノミで削って沈めていくことになります。

 





 ダブテイルがヒールブロックの受けにしっかり食いつき、後述するチェックポイントも満たせば、ネックを入れます。接着 剤を塗るのは、ダブテイルの肩の部分だけです。ネックを入れるのはクランプ1本で締め込みます。接着剤を塗ると若干木 が膨らんで、はいりがきつくなりますので、クランプはかなり強めに締めることになります。裏板側にはしっかりあて木を しておきます。

 締め込んで固定できたら、すぐにクランプを外します。ネックはいったん入ってしまうと(ちゃんと面が合っていれば) 接着剤が乾いていなくても、人力ではまず抜けません。逆に言うと、失敗してもやり直しは非常に困難です。




チェックポイント
 

 ネック入れの時にチェックするポイントを何点か(思いつく範囲なので、忘れてるポイントがあったらごめんなさい)あげ ておきます。

1.ダブテイルの食いつき
 胴の溝とダブテイルの肩が完全に密着しており、はめる時にギュっという音がしてしっかり食い付き(ネックをもって振り 回しても外れない程度の強固さが必要)、外すときは手では抜けずプラスチックハンマー等でヒールを叩いてやらないと外 れないくらい密着していることが必要です。



2.ネックのセンター
 胴のセンター(表板のはぎ合わせのライン)とネックのセンターがまっすぐに通っていること。弦が直線的に張られますので、 このラインの狂いは結構目立ちます。

3.ヒールのセンター
 表板側だけでなく裏板側、ヒールキャップのセンターと裏板のはぎ合わせの線があっているかどうかも確認します。表板 のセンターがあっているのにこの位置があわない場合はヒールが斜めに入っている、もしくはヒール自体のセンターが ずれているということになります。



4.仕込み角(弦高)
 ネックの仕込み角は弦高に影響してきます。まだフレットを打っていませんので、必要な弦高+フレット高1mm程度で取って いきます。写真の場合、定規の目盛が2mm、指板が少し浮いていますので、実際の高さが3mm程度だと思います。
 実際に弦を張ると、弦高があがってくることが多いので、弦高を計る際のサドルは余裕をもっておいた方が無難な気がしま す。ちなみに、この時点では、ブリッジも指板も製作していませんので、仮のブリッジ、仮の指板を使っています。

5.指板接着面と胴の水平
 指板接着面の表板の面がフラットにつながっているか確認します(所謂、ネックがひねった状態になっていないか)。 特に高音側にひねっている(高音側が下がって低音側が上がっている)と、致命的欠陥になる(低音の弦幅の方が多い いので、ビビリが出やすくなる)場合があります。



6.側板とヒールの密着
 前述したとおり多少の隙間は、強度や演奏性には影響ありません。しかし、見た目がかなりよくないので、きっちり合わせ ておきます。

7.少しネックの方が胴より浮いていること
 手で押し込んだ時、コンマ数ミリネックの方が浮いている(最後のひと押しをクランプで締めてフラットに入る程度の浮き) 方が、しっかりネックを押し込むことができます。

 



ヒールの加工





 ネックが入れば、ヒールキャップを貼り付けていきます。ヒールは長めになっていますので、ノコギリで、裏板とフラッ トまで落としました。この後まだノミを入れますので、この作業を飛ばして、いきなりノミを入れた方が効率的かもしれません。 裏板にノコ刃の傷がつくリスクもありませんし。

 ヒールキャップの厚みは2mm程度で考えていますので、その位置を鉛筆でマーキングします。私は、クラシックギター風のテ イストが好きなので、裏板とフラットにヒールキャップを仕上げますが、アコースティックギターは殆ど段差がある(ヒールキ ャップの方が低い)ので、その辺りは製作者の好き好きだと思います。







 マーキングした位置まで、ノミで切り落とします。切り落とした面にヒールキャップが乗りますので、加工した面は完全に フラットであることが必要です。サンドペーパーを使うと、角を丸くしてしまいやすいので、ノミだけで仕上げています。




ヒールキャップの製作、貼付





 ヒールが仕上がれば、ヒールキャップの材に形を書き入れます。少し大きめに切りだしてから微調整しますので、写真の 感じで実物をガイドにして写し取ればOKです。ヒールキャップの材は、裏板を取った残りのメイプルです。端材は、これ 以外に失敗して欠けてしまった時の埋め木などにも使いますので、大切に残しておきます。

 罫書ければ、ノコギリでラフに切り出し、実際のヒールの形に合わせて小刀で整形していきます。






 ヒールキャップは胴と接する部分のみ、ぴったりに合わせます(この部分は貼ってしまうと小刀が入れられないので)。 ヘッド側は後で整形できますので、少し余裕のある状態に仕上げておきます。整形できれば、接着剤を塗り、クランプで 固定します。ヒールキャップは小さな部品なので複数クランプをかけることができません。接着面を完璧な平面に仕上げ ておかないと、隙間ができてしまいます。







 接着できれば、小刀でヒールキャップとヒールがぴったり合うように整形していきます。  前述しましたが、今回は裏板とヒールキャップをフラットに仕上げますので、ノミを使い、裏板と面一に整形します。  仕上がりは写真の通りです。



前のページへ 目次へ 次のページへ