表板の製作ついて |
表板も裏板同様、接ぎ合わせと力木の面出しに大きく左右されます。接ぎに関しては裏板の様に割れ止めが無い分、より高い精度が求められま
すし、裏板の外れ(音の輪郭がぼやける)以上に音にも外形にも影響がでやすいので時間をかけて完璧を目指すべきだと思います。慣れれば10
日もあれば十分できますが、3週間はみておく方がいいでしょう。
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厚み出し |
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今回はシトカスプルースのAAを使います。数年前、カナダから10セットまとめて購入した材のひとつです。この材、材質はよいのですが、
残念ながら割れが入っていて、00以上のサイズは取れません。このような材の質の割に安価で手に入る材を使えるのが、PARLOR GUITARの大きな
メリットだと思います。
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表板材は5mm程度に製材されていることが多いです。今回の材も5mm強に製材されていますので、最初に自動カンナを通して、厚み出し
をします。裏板の時の厚み出しと同様の作業ですが、材が柔らかい分、柾目方向にさえ通していれば、欠けたりすることはありません。
はぎをした後に、もう一度カンナで削りますので、その余裕もみて、3.5mm程度の厚みでとめておきます。
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接ぎ合わせ(接着面の加工)
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厚みが出れば、モールドを使って外形を書き込みます。はぎを楽に仕上げるには、できるだけ合わせる面が短い方がよいので、適当な長さに
手ノコで切り落とします。スプルースは柔らかい材なので、切断の途中で変な方向にのこぎりを曲げたり捻ったりすると簡単に木目にそって裂
けてしまいますので、それなりに気を使って切断します。
板の大きさが整えば、カンナで接ぎ合わせの面を出していきます。面が合うまでに結構時間がかかっていますが・・・裏板と基本的には同じ
作業なので、詳細は省略します。裏板の材に比べて(糸杉、いわゆるシープレスは除く)スプルースは柔らかいので、油断しているとあっとい
う間に幅がなくなります。また、はぎの真中をえぐる深さも堅い木とは多少違ってきます。
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裏板ののように割れ止めをあてませんから、裏板以上の精度が求められますし、演奏中、表板は常に見えるわけですから、裏板以上に隙間なく、
継ぎ目か木目かわからない程度の仕上がりを目指します。仕上がりは写真のとおりです。時間はかかりましたが、案外うまくできました。
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接ぎ合わせ(接着と厚み出し)
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はぎ合わせには裏板同様、タイトボンドのLIQUID HIDE GLUEを使いました。写真は、LIQUID HIDE GLUE入浴の図。作業したのは冬の2月。
LIQUID HIDE GLUEは、気温が低いと、硬くなりますので、使う前にお湯につけて軟らかくしておきます。
はぎ合わせする面に十分接着剤を塗ります。前にも書いたように思うのですが、うまい人は適量できれいに塗りますが、私は適量に自信
がないので、多めに塗ります。ほとんどを絞り出してしまう(絞り出さないと強く綺麗に貼れません)ので、もったいないのは確かなので
すが、接着不良で外れるよりましと割り切っています。
接着剤を絞り出すようにはたがねを絞めて圧着するのも裏板と同じです。余り強く締めすぎても、スプルースがたわむだけで、変な状態
でくっつくおそれもありますので、適度な強さで絞めます。 あふれた接着剤は、乾く前にお湯で濡らした雑巾で拭き取ります。
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一日放置すれば、接着材はしっかり固まります。表側の接着剤は拭き取りましたが、裏側は拭き取れていませんので、カンナで削り落します。
はぎの時に段差ができていた場合も、この段階で削って段差を取ります。
接着剤の汚れや、はぎの段差が取れれば、全体にカンナがけし、板厚をそろえていきます。 板厚が3mmになるようにカンナをかけました。
はぎをすると、板の左右で柾目と逆目が逆になりますので、ざっくりと刃が入ってしまいやすいです。危険を冒したくない場合は、ひたすらサン
ディング(ドラムサンダー可)で仕上げる手もあります。
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口輪の埋め込み(溝切り) |
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板厚が整えば、モールドを使い形を書き込みます。板のどちら側をネック側にするかは、木目を見て判断します。どの位置で取るかは、
板の割れや傷、あるいは節などが胴にかからない位置で、木目なども考えて決めます。
外形が取れれば、ネックジョイント部から、指板の位置を落とし、そこからサウンドホールの中心部の位置を決めます。サウンドホール
の中心が決まれば、サウンドホールの円を取り、更にロゼッタの位置を書き込んでいきます。今回は、クラシックギター風の木象嵌のロゼ
ッタを入れることにしました。
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位置が決まれば、サークルカッターでロゼッタを埋める溝の外のラインを切ります。今回はサークルカッター
を使っていますが、トリマーやボール盤を使った方が綺麗に切れると思います。
サークルカッターで切る場合は、木目部分が硬いので、切れ味のよい刃を使っても、木目と垂直に切るとこ
ろでは切り口の深さが凸凹になったり、木目と平行に切るところでは木目にそって直線になってしまったりし
ますので、注意が必要です(実際にやってみないとなかなか文章だけではわかりにくいと思いますが)。
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口輪の埋め込み(接着) |
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外のラインが切れれば、ノミ(今回は彫刻刀)で溝を彫っていきます。 深さは、少しロゼッタが表板から出
る程度にしておきます(そうしないと、上から抑えた時、力がかからない)。 溝が彫れれば、ロゼッタを埋
め込みます。溝に十分接着剤(タイトボンド?)を塗ります。
接着剤が塗れれば、ロゼッタをはめこみます。接着剤は、あふれ出るぐらい、少し多めの方がアマチュアレ
ベルでいうと安全です。 そのままあて木をすると、あふれた接着剤で表板とあて木がくっついてしまうので、
ロゼッタの上にビニール袋等の木工用接着剤が効かないものをあてました。その上に、多少溝に凸凹があっ
ても、ちゃんと力がかかるように、緩衝材がわりの新聞紙をはさみました。
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更にあて木を置き、その上に重石を置きました。クランプでしめてもよかったのですが、こちらの方が手軽で、
均等に力がかかるので、今回は重石にしてみました。 重石は、ホームセンター等で売っているレールの切れ端
です。
一日しっかり重石をかければ、できあがりです。 ロゼッタがしっかり接着されていないと、いくらカンナがけ
しても、ロゼッタが浮いてきて、いつまでも平面がでなかったり(これは失敗の経験者でないとわかりにくい
かもしれません)、カンナがけの時に飾りが欠けたり、目が抜けたりすることがありますので、きっちり接着
することが大切です。
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外形の切り出し |
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ロゼッタが接着できれば、カンナで、あふれた接着剤の除去し、ロゼッタの高さを表板と揃えます。
高さがそろえば(面が面一になれば)、サンディングで仕上げます。。この段階で、完璧に綺麗に仕上げ
なくても、後々何度か表板をサンディングする機会がありますので、平面にさえなっていれば基本的にはOK
です。
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ロゼッタの加工が終われば、ギターの形に切りだします。裏板の時同様、10mm程度余白を付けて切り取線
を書き込みます。
切り取線が書ければ、ノコギリで切りだします。柾目方向に板を割ってしまわないようにくびれ部に切り込
みを入れるのは、裏板と同じですが、裏板以上に割れやすいので注意が必要です。
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サウンドホール開け |
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ボディの外形が切りだせれば、ボディの上端(という表現が正しいかどうかわかりませんが)に切り込みを
入れます。裏側に力木等を配置するときの唯一の基準点になります。
表側の最後の仕上げに、サウンドホールをサークルカッターでくり抜きます。何度もサークルカッターを使
っていると中心の穴(針の起点)がだんだん大きくなってきますので、注意が必要です。 少しサウンドホール
が大きい気もします(ロゼッタとサウンドホールの間の余白が少ない)が、問題ないでしょう。
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外側が仕上がれば、次に内側、力木を張っていきます。切り込みを入れたボディの頂点を起点にして、力木
の配置を書き込んでいきます。今回の力木の配置は、Xブレースを基本にしたオリジナルブレースです。
どんな音になるか・・・本人にもわかりません。一応基本は外していないはずですので、大失敗はないはずです。
ふだんから、テンプレートや図面は作りません。いつも表板に直接罫書きます。なので、毎回力木の配置
は違いますが、できてしまうと、だいたい私のギターの音になります。不思議なことに。
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