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last update 2014.11.28

塗装について





【はじめに】

 私自身それ程塗装に詳しい訳ではないのですが、聞いた話等を含めて少し書いてみます。メーカーの カタログ等でアコースティックギターの塗装として、主にみかけるものはラッカーとポリウレタン (あるいはポリエステル。同じ塗料ではありませんが、以降ポリウレタンだけの表示にします)でしょう。 私なりの詳細は後述しますが、一部例外を除き(ラミレスの1a等)高価なものはラッカー、安価なものは ポリウレタンという感じだと思います。

 価格差の理由は施工手間によるものですが、手間がかかり結果的に価格が高くなるラッカーが、使われ 続ける理由は、音に対する影響があります。実話と神話が混在し、意味のない付加価値をつけるだけの 薀蓄も結構あるギターの世界ですが、現在のところ(今後の技術革新でどうなるかわからないので)、 ラッカー塗装の方が、ポリウレタンよりよい音が出ることは事実だと思います。逆に鳴りが抑えられる ことを利用して、タカミネのエレアコなどは、ハウリング防止のため、あえてポリウレタンを厚めに塗って いたりするようです。

 これも後述しますが、シェラック塗装もクラシックギターの世界では高級品に使われる塗装方法です。 また、周辺環境への影響から、アマチュア製作家にはラッカー塗装よりも好まれる手法です。そのほかにも ニス(バイオリン族では主流です)やオイル系塗料(エレキギターでたまに使われます)、カシュー (昔流行ったようです)などもあります。

 塗り方も、刷毛塗り(ニス等)やタンポ塗り(シェラック等)、コンプレッサーによる吹き付け (ラッカー、ポリウレタン等)などの種類がありますが、コンプレッサーによる吹き付けが一番楽です。 多少騒音が出るのと、ラッカー等のシンナー臭が住宅環境によってはハードルが高いのが欠点でしょうか。 最近は、有機溶剤の環境負荷から、水性塗料を使うルシアーもいるようです(雑誌でちょっと見ただけな ので、名前は失念)。

 バイオリンの銘記、ストラディバリウスの音は、塗装に重要なポイントがあると言われていますが、 ギターでは案外塗装は軽視されている感は否めないと思います。例えば、ラッカー塗料といっても、 塗料は何種類も有ります。下地塗装に使うサンディングシーラーも、ラッカー薄めるシンナーも同様、 何種類も売られています。どういう理由で多くの塗料の中から、その塗料を選んだのか?そこまでこだ われば、今までと違ったギターの見方がでてくるかもしれません。



【シェラック塗装】

 高級なクラシックギターなどで使われています。シェラックニスをアルコールで溶かしながらタンポ塗り していきます。コンプレッサー等の器具が必要ないことや、ラッカーのようにシンナー臭が出ないことから 、アマチュア製作家で愛用者が多いです。

 欠点は、塗装自体が弱く、光沢がすぐに無くなったり、はげたりします(肘があたる部分など、手が触れる 部分は特に)。塗装強度の問題等から、アコースティックギターでは殆ど使われていない塗装方法だと思い ます。



【カシュー塗装】

 一時、クラシックギターの塗装で流行ったようです。私はカシューが流行った時よりあとに生まれてい ますので、カシュー塗装のギター自体見たことがありません。知識がまったく無いので、ノーコメントです。



【ラッカー塗装】

 高級アコースティックギターの塗装などに使われており、耐久性と音への影響などを考えると、最も適した 塗装とも言われています(人によって考え方は違うと思いますが)。利点は薄くて強度のある塗膜が作れるこ とにあると思います。また、磨き上げたときの透明感と深みのある、木目の奥行きが感じられるような塗装面 はラッカー塗装ならではの仕上がりです。

 他方、欠点としては、まず塗装時の臭いがあげられると思います。住宅地やマンションで日常的に塗装を 行うことは、近所の苦情を考えると、かなり難しいと思います。次に、一度に厚い塗膜を塗ることができな いため(厚すぎると垂れます)何度も繰り返し塗装することが必要になり、工場生産する場合はその手間と 時間は、ばかになりません。また熱に弱いため、機械でパフ掛けすると塗装がズルッと剥がれてしまう危険 があり、基本は手で磨きだすことになります。塗装自体はそれ程手間ではありませんが、磨きにとても手間 がかかります。

 あと、シェラックほどはないにせよ、ポリウレタンと比べると塗装が弱く、熱で塗装が柔らかくなったり もします。それと、欠点と見るか利点と見るかはひとそれぞれですが、年数が経つと光沢が落ちてきて、 更に木が塗装を吸って(塗装が引くというやつです)木目が浮いてきたり、ウェザークラックが発生したり します。

 蛇足ですが、日本製のギターは細かいウェザークラックが発生する場合が多いですが、マーチンやギブ ソンは大きいウェザークラックが発生する傾向にあるようです(わかりにくい表現ですね)。



【ポリウレタン塗装】

 普及品のアコースティックギターによく使われる塗装方法ですが、高級クラシックギターではラミレスが 採用しています。近年、薄く塗る技術が開発されたようで、今後情勢はかわってくるかもしれませんが、 2008年現在の情報で書いていきます。

 ポリウレタン塗装の利点は、その強度と不変性、更に量産向きの扱いやすさにあると思います。まず、 強度ですが、元々の強度がラッカーよりある上、より厚い塗膜が簡単に作れるという特徴があります。また、 不変性、言いかえれば安定性も高く、何年経ってもラッカーのように塗装が引くこともなく、光沢も製造時 の輝きを保ち続けます。熱にも強く、ストーブの前で弾いても、塗装が溶けることがありません。

 その利点はそのまま生産性の高さに直結しています。一度に厚い塗膜が作れるということは、塗装時間が ラッカー塗装より、ずっと短い時間で塗装工程を終了させることができます。また熱にも強いので、わざわざ 手で磨かなくても、機械によるパフがけで楽に光沢を出すことができます。

 欠点は、その塗膜の丈夫さ、厚さ故にギターの鳴りを殺してしまうことにあると思います。薄いポリウレ タン塗装が可能になったということですので、今後この評価は変わってくるかもしれませんが、ポリウレ タン塗装のギターでも表板のみラッカー塗装が使われているギターも存在しています。

 また、いつまでも輝き続けますので、塗装の引いたビンテージらしい姿になることはありません。これは、 好みの問題に過ぎないのですが。



【水性塗料】

 環境面や健康面への配慮から、塗装業界では、水性塗料が段々優勢になってきてるように思います。 シンナーの臭いが苦手な方も多く、プロ製作家の方でも積極的に使っている人もいますので、今後増えて くるかもしれません。まだ水性塗料を使ったギターを私自身見たことが無いので、詳しくはよくわかりま せん。



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