塗装について
【はじめに】
|
私自身それ程塗装に詳しい訳ではないのですが、聞いた話等を含めて少し書いてみます。メーカーの
カタログ等でアコースティックギターの塗装として、主にみかけるものはラッカーとポリウレタン
(あるいはポリエステル。同じ塗料ではありませんが、以降ポリウレタンだけの表示にします)でしょう。
私なりの詳細は後述しますが、一部例外を除き(ラミレスの1a等)高価なものはラッカー、安価なものは
ポリウレタンという感じだと思います。
価格差の理由は施工手間によるものですが、手間がかかり結果的に価格が高くなるラッカーが、使われ
続ける理由は、音に対する影響があります。実話と神話が混在し、意味のない付加価値をつけるだけの
薀蓄も結構あるギターの世界ですが、現在のところ(今後の技術革新でどうなるかわからないので)、
ラッカー塗装の方が、ポリウレタンよりよい音が出ることは事実だと思います。逆に鳴りが抑えられる
ことを利用して、タカミネのエレアコなどは、ハウリング防止のため、あえてポリウレタンを厚めに塗って
いたりするようです。
これも後述しますが、シェラック塗装もクラシックギターの世界では高級品に使われる塗装方法です。
また、周辺環境への影響から、アマチュア製作家にはラッカー塗装よりも好まれる手法です。そのほかにも
ニス(バイオリン族では主流です)やオイル系塗料(エレキギターでたまに使われます)、カシュー
(昔流行ったようです)などもあります。
塗り方も、刷毛塗り(ニス等)やタンポ塗り(シェラック等)、コンプレッサーによる吹き付け
(ラッカー、ポリウレタン等)などの種類がありますが、コンプレッサーによる吹き付けが一番楽です。
多少騒音が出るのと、ラッカー等のシンナー臭が住宅環境によってはハードルが高いのが欠点でしょうか。
最近は、有機溶剤の環境負荷から、水性塗料を使うルシアーもいるようです(雑誌でちょっと見ただけな
ので、名前は失念)。
バイオリンの銘記、ストラディバリウスの音は、塗装に重要なポイントがあると言われていますが、
ギターでは案外塗装は軽視されている感は否めないと思います。例えば、ラッカー塗料といっても、
塗料は何種類も有ります。下地塗装に使うサンディングシーラーも、ラッカー薄めるシンナーも同様、
何種類も売られています。どういう理由で多くの塗料の中から、その塗料を選んだのか?そこまでこだ
われば、今までと違ったギターの見方がでてくるかもしれません。
|
|
【シェラック塗装】
|
高級なクラシックギターなどで使われています。シェラックニスをアルコールで溶かしながらタンポ塗り
していきます。コンプレッサー等の器具が必要ないことや、ラッカーのようにシンナー臭が出ないことから
、アマチュア製作家で愛用者が多いです。
欠点は、塗装自体が弱く、光沢がすぐに無くなったり、はげたりします(肘があたる部分など、手が触れる
部分は特に)。塗装強度の問題等から、アコースティックギターでは殆ど使われていない塗装方法だと思い
ます。
|
|
【カシュー塗装】
|
一時、クラシックギターの塗装で流行ったようです。私はカシューが流行った時よりあとに生まれてい
ますので、カシュー塗装のギター自体見たことがありません。知識がまったく無いので、ノーコメントです。
|
|
【ラッカー塗装】
|
高級アコースティックギターの塗装などに使われており、耐久性と音への影響などを考えると、最も適した
塗装とも言われています(人によって考え方は違うと思いますが)。利点は薄くて強度のある塗膜が作れるこ
とにあると思います。また、磨き上げたときの透明感と深みのある、木目の奥行きが感じられるような塗装面
はラッカー塗装ならではの仕上がりです。
他方、欠点としては、まず塗装時の臭いがあげられると思います。住宅地やマンションで日常的に塗装を
行うことは、近所の苦情を考えると、かなり難しいと思います。次に、一度に厚い塗膜を塗ることができな
いため(厚すぎると垂れます)何度も繰り返し塗装することが必要になり、工場生産する場合はその手間と
時間は、ばかになりません。また熱に弱いため、機械でパフ掛けすると塗装がズルッと剥がれてしまう危険
があり、基本は手で磨きだすことになります。塗装自体はそれ程手間ではありませんが、磨きにとても手間
がかかります。
あと、シェラックほどはないにせよ、ポリウレタンと比べると塗装が弱く、熱で塗装が柔らかくなったり
もします。それと、欠点と見るか利点と見るかはひとそれぞれですが、年数が経つと光沢が落ちてきて、
更に木が塗装を吸って(塗装が引くというやつです)木目が浮いてきたり、ウェザークラックが発生したり
します。
蛇足ですが、日本製のギターは細かいウェザークラックが発生する場合が多いですが、マーチンやギブ
ソンは大きいウェザークラックが発生する傾向にあるようです(わかりにくい表現ですね)。
|
|
【ポリウレタン塗装】
|
普及品のアコースティックギターによく使われる塗装方法ですが、高級クラシックギターではラミレスが
採用しています。近年、薄く塗る技術が開発されたようで、今後情勢はかわってくるかもしれませんが、
2008年現在の情報で書いていきます。
ポリウレタン塗装の利点は、その強度と不変性、更に量産向きの扱いやすさにあると思います。まず、
強度ですが、元々の強度がラッカーよりある上、より厚い塗膜が簡単に作れるという特徴があります。また、
不変性、言いかえれば安定性も高く、何年経ってもラッカーのように塗装が引くこともなく、光沢も製造時
の輝きを保ち続けます。熱にも強く、ストーブの前で弾いても、塗装が溶けることがありません。
その利点はそのまま生産性の高さに直結しています。一度に厚い塗膜が作れるということは、塗装時間が
ラッカー塗装より、ずっと短い時間で塗装工程を終了させることができます。また熱にも強いので、わざわざ
手で磨かなくても、機械によるパフがけで楽に光沢を出すことができます。
欠点は、その塗膜の丈夫さ、厚さ故にギターの鳴りを殺してしまうことにあると思います。薄いポリウレ
タン塗装が可能になったということですので、今後この評価は変わってくるかもしれませんが、ポリウレ
タン塗装のギターでも表板のみラッカー塗装が使われているギターも存在しています。
また、いつまでも輝き続けますので、塗装の引いたビンテージらしい姿になることはありません。これは、
好みの問題に過ぎないのですが。
|
|
【水性塗料】
|
環境面や健康面への配慮から、塗装業界では、水性塗料が段々優勢になってきてるように思います。
シンナーの臭いが苦手な方も多く、プロ製作家の方でも積極的に使っている人もいますので、今後増えて
くるかもしれません。まだ水性塗料を使ったギターを私自身見たことが無いので、詳しくはよくわかりま
せん。
|
|
|
|