ギターの当たり外れについて
【はじめに】
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マーチンやギブソンのビンテージなどで当たり外れがあるなどと聞きますが、それはどこに理由があるの
か!?素人なりに聞いたり、考えたりしたことを少し書いて見ます。あたりはずれについては、短いスパン
で見た場合と、長いスパンでみた場合とで、有り無しの判断がかわってくると私は思っています。それをメ
ーカーの量産品と個人製作家の手工品とで、比較して表現してみたいと思います。
先に答えから書いておくと、量産品は短いスパンで見ると当たり外れがあると言えます。しかし、長いス
パンで見ると、当たり外れは無いと言ってもいいように思います。逆に、手工品は短いスパンで見ると、当
たり外れは無いと思います。しかし、短いスパンで見ると、当たり外れがあると言っていいのではないでし
ょうか!?
あくまでも私の判断ですので、同意できない方もたくさんおられるでしょうが、お付き合いを。ちなみに
ポイントは材料と製作方法です。
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【短いスパンで見たメーカーの量産品】
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メーカーでギターを製作する場合、基本的にすべて同じ生産工程を経て作られます。そのため、ブレー
シングの配置や板の厚みなどは基本的に全て同じになります。しかし、他の工業製品のように材料が個体
差の少ないプラスチック等とは異なり、同じ物はひとつとして存在しない木になりますので、他の工程を
同じにすればする程、逆に製品の個体差が発生しやすくなります。
また、メーカーでは月間何本というような、計画を立てて生産します。ギター用の板材をまとめて購
入された方ならおわかりになるかなとも思うのですが、例えばAAランクの板材を10セット、20セッ
トとまとめて買うと、限りなくAAAに近い(一般的にAの数が多いほうが質がよい)材やAに近い材が混
在しています。AAというランクが全て同じ基準ではなくある程度の幅を持った品質基準であるためですが
、それだけでも個体差が発生する要因になります。
また、生産計画に基づいて材料を用意することになるのですが、こちらも他の工業製品と異なり、いつ
もかならず同じランクの材料を揃えられるとは限りませんし、製造工程の破損や検品ではねられる等で、
材料が足りなくなる場合もあります。その場合、本来AAAランクの材を使うギターでも、AAAランクの材が
確保できない時は、単体のコストは度返しして(生産数が多ければ、1体がコスト割れしてもトータルで
利益は確保できる)AAAAランクの材を使うこともあるようです(メーカーの信用から、AAに落とすとこは
ほとんど無いと思います)。
結果、実際そのギターに通常使う材よりよい材、例えばD-28にD-45の材を使ったような個体が生産され
ます。また、メーカーは(最終の微調整はあるにせよ)ほぼ同等の仕上げでギターを作りますが、木の材質
(硬軟や密度など)と元々の設計が合致する場合も有ります。各材(表板、裏板etc.)がメーカーの設計に
ピッタリとはまるケースはごく稀だとは思いますが、メーカーは大量に製品を作っていますので、それなり
の数の奇跡的なギターが発生するようです。
ただ、発生するとは言ってもその個体数は限られていますので、ギターの取扱いを生業とされている方で
も、あれはよかったと思い出せるほど一生の内で数本出会えれば幸運というぐらいのもののようです。まし
てや我々のようなアマチュアが出会える可能性となると・・・天文学的確率だと思います。もしもそんな楽
器に出会えたら、即買いかな!?
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【短いスパンで見た個人製作家の手工品】
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メーカーの際の逆説的な話になるのですが、個人製作家(1人で製作工程を全てまかなう場合)では、
多くて月産20本程度になるかと思います。個人製作家は、かなりの量の材(ベテランのプロの方は、
一生かかっても使い切れない程の材をお持ちの方が多いようです)をお持ちでそこから選別しますので、
同じ価格のギターで比べると、材の質のばらつきは、大量生産する場合よりも少なくなるようです。
また、材には当然個体差がありますが、1本1本手作りする場合は、材の特徴にあわせて、厚みや
ブレースの位置等を微妙に変えて、自分が目標とする音が出せるよう、製作時から個別に調整しますの
で、材の個体差による製品の音のばらつきは小さくなります。結果、月産20本とした場合、その月に
作った同じ価格帯の製品は殆どばらつきのないギターに仕上がる傾向にあるようです。
また、同じ師匠に指導をうけ、同じような材料を使って同じように厚みを調整し、同じ配置でブレース等を組み
作った場合でも、別の人がつくると、不思議なことに違う音色のギターができあがる傾向にあるようです。
接着剤の使う量とか、圧着時の圧のかけ方とか、鉋やノミの癖、塗装の癖など様々な要因があるかと思いま
すが、その音の傾向は研鑚を重ねてもどこかに残るようです。
例示として適切かどうかはわかりませんが、同じラミレスのギターでもPB(ベルナベ)のゴム印がある
ものは非常に人気が高いというのも、その辺りに一因があるのかもしれません。同じラミレス工房のやり
方で、同じ材料、設計で作ってもどこかにベルナベの匂いがする部分があるのではないでしょうか?まぁ、
実際に弾いたことがあるわけではないので、あくまでも推測ですが。
手工系でも多数の弟子を抱えて分業でしているところは別にしても、機械は使うにしても1人で作業の
殆どをする製作家の場合、その製作家の匂い(個人的にこの表現が好きです)がするように思います。
その辺りもばらつきが少なく感じる部分なのかもしれません。そう言えば、愛好者の方になると、
ラベルが無くても作りや音色で、この人の作品に間違い無いとわかるそうです。
ベテランの方になると、材(表板や裏板の材質が何であっても)の差異にかかわらず、できあがって
みるといつもの音の(傾向の)楽器ができあがるようです。ただ、その辺りはカタログでは分からない
部分なので、実際に何本も弾き比べて自分の好みにあった楽器を探していくしかないんだろうなとは思
います。
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【長いスパンで見たメーカーの量産品】
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最初に、月間等の短いスパンで見るとメーカーの量産ギターは個体のばらつきが出る場合があると書きま
したが、1年以上の数年というスパンでみた場合について言うと、メーカー品は比較的ばらつきが少ないと
言えます。何を矛盾したことを言っているのかと言われそうですが、個人製作家と比べてという感じで書い
ていますので、ご容赦を。
メーカーが生産する場合、職人が1人かわったから、音が極端に変わったなどという事態は認められませ
ん。乱暴な言い方ですが、車で工員さんがかわったから、突然車の加速が悪くなったなどという事態があれ
ば、そのメーカーの信用問題にかかわります。そのため、工場で生産するレベルになると製品の徹底した品
質管理がおこなわれており、年代の近い同じモデル名である限りおおよそこのような音というのが想定でき
るように作られているように思います(木という材料を使っている以上、個体差は間違いなくありますが)。
ただ、年代が離れるとか、大きな変更があった場合とかは別ですけど。具体的に言うと、マーチンの
D−28等で69年の途中までと、70年代以降と(ハカランダからインディアンローズウッドへの変更)
の違いとか、ギブソンのJ−45のラウンドショルダーからスクェアショルダーに変わった時とかのことで
す。また、形だけでなく、規模拡大で工場が移転した等の時はデザインや材質がかわらなくても、音が変わる
ように言われています。昔で言えばGIBONの工場移転前のモデルの方が、ビンテージ価格が高いとかありま
すよね!?
最近では、ラリビーは生産拠点をカナダからアメリカに移した時ですかね。結構デザインとか
も変わったように思いましたが、これから先、移転前と後でどう評価されていくんでしょうね!?
話がえらく逸れてしまいましたが、そういうふうに考えると、メーカーの量産ギターは、長期的に見る
と当たり外れは少ないと言えるのかなと、私は思っています。
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【長いスパンで見た個人製作家の手工品】
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アマチュアでも、楽器を製作していると、完成した楽器を弾いてみて、この音がもう少し欲しい、この音
が出すぎてバランスを崩している等々、良くしたい部分が出てくると思います。熟練したプロになっても同
様で、よりよいものを求めて試行錯誤を繰り返すことになります。
いろいろ実験的に改良していったりするのですが、それが上手く行くときもあれば、思うような効
果が得られない場合もあります。また、考えていた部分以外のところが変わって思わぬ好効果が得られる場
合もあるようです。
個人製作家の場合、メーカーのようにモデルチェンジされるまでは、一定の音質を保つという品質管理的
なものとは異なるスタンス、毎回研鑚のようなスタンスで製作していますので、1年、2年というスパンで
見ると、劇的に音が変わったりすることが有り得ますし、個人の製作技術が頼りとなりますので、加齢によ
る技術の変動もありますので、何年頃の作品が脂が乗り切って最も評価が高いなどの話題になったりもしま
す。
また、もう少し高音の共鳴が欲しいと思い改良してその効果が得られたとしても、変わりに低音が以前よ
り音の輪郭がぼやけてしまったなどという場合もあり、全てに満足がいく結果がでるとは限りません。更に、
改良による音の変化はあくまでも製作家の感じ方による改良ですので、演奏する人が、同じように感じると
はかぎりません。
楽器には優劣は有ると言えますが、一定のレベル以上になると、個人の好みに委ねられる部分もかなり出
てきますので、製作家が、今回のギターは前のギターより数段いい音だと思っても、演奏者は前のギターの
方がよかったと思うことも充分有りえます。
話がかなり横道に逸れてしまいましたが、個人製作家は1年、2年といったスパンで見ると、当たり外れ
は有ると言えます。ただ、音色には個人の嗜好がはいってくるので、ベテラン期に作ったものが必ず、演奏
者本人にとってベストのギターになるとは限らないのがおもしろいところだと思います。
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